20の扉
20の扉
概要
1000ページの本にはどれくらいの情報があるのでしょう。1000ページの電話帳にはもっと 情報があるのでしょうか、また、同じ 1000 ページでも白紙を綴じただけのもの、あるいは、ト ルーキンの『指輪物語』はどうでしょう。もし、そんなことが測れるなら、情報を蓄えるには どれくらいの場所が必要か見積もることができます。たとえば、飛行機に荷物を預けると、荷 物に NRT、HND、HKG などと書いた紙が付けられます。たった 3 文字のローマ字ですが、だい たいどの空港かを想像することができますね。ちなみに答えは、成田、羽田、香港です。では、 次の母音字を欠いた英語の文を読むことができますか?
Ths sntnc hs th vwls mssng.
きっと「This sentence has the vowels missing.」と正しく読めると思います。つまり、母音にはそれほど情報はないのです。ここでは、情報量を測る方法について学びます。
教科学習との関連
- [数と計算]数の比較:より大きい、以上、以下、未満、範囲。数の大小は小1から扱っていますが、「≧」は、数と式の領域で中1に配当されています。
- [数量関係]パターンによって数を表すこと、また高校での等比数列にも関わりを持たせることができます。
- [国語]言葉や文章の持つ一種の冗長性を意識するのに有用な教材です。
技能
- Comparing numbers and working with ranges of numbers 範囲が定まった数を扱う。
- Deduction 推論する。
- Asking questions 質問をする。
年齢
- 10歳以上
教材
- はじめの活動には何も必要ありません
20の扉
話し合おう
情報とは何かを話し合ってみましょう
本に書いてある情報量はどうやって測れるでしょう。ページ数が重要ですか、それとも字数でしょうか。ある本に他の本よりも多くの情報を含ませることができますか。すごく退屈な本や、 逆に面白い本もあります。「デタラメ、デタラメ、デタラメ」という文だけが含まれている 400 ペー ジの本があったときに、この情報量は電話帳より多いのでしょうか。
コンピュータ科学者は、文章や本にどれだけ驚きがあるかで情報量を測っています。既に知っ ていること、たとえばいつも歩いて学校に来る子が「きょうは歩いて学校にきたよ」と言った とすると、これには情報量がありません。びっくりすることではないからです。でも、「きょう はヘリコプターで学校にきたよ」と言ったとしたら、これにはびっくりするでしょう。つまり、 多くの情報量をもたらしたということになります。
では、メッセージの「びっくり度」はどうやって測るのでしょう。
ひとつの方法は、情報を推測するのがどれだけ難しいかをみることです。もし、いっしょに 歩いて学校にきた友だちに「きょうどうやって学校にきたかあててごらん」と言われたら、1 回 で当てることができます。でも、以前ヘリコプターに乗ってきたことがあれば、「まさかヘリじゃ ないよね」と確かめる必要があるかもしれません。ましてや、宇宙船で旅をしたことがあるなら、もっと手間がかかるかもしれません。
メッセージの持つ情報量は、それを推測するのがやさしいのか難しいのかで測ります。次の ゲームは、このようなことを理解するのに役立ちます。
ゲーム 20の扉
ここでは20の扉というゲームを紹介します。子どもたちは、1人の子どもに質問をしていき ます。その子は「はい」、「いいえ」しか答えられません。「はい」か「いいえ」で答えられるも のであれば、どんな質問をしても構いません。
質問の例
今から当てて欲しい数が何種類かあります。 ・1 から 100 までの数です
- 1から 1000 までの数です
- 1から 1,000,000 までの数です
- 整数です
- 5個の数がある順に並んでいます。
数を順番に当ててください ( 例 2、4、6、8、10)
当てるのに何回質問する必要がありましたか。この回数を「情報量」といいます。
- 補足の話し合い
どのような作戦で質問していきましたか。どれがいちばんよかったですか。
1から100までの数は7回の質問で当てることができます。それぞれの質問で範囲が半分になるようにすればよいのです。例を見てみましょう。
50 以下 ? はい 5以下? いいえ 37 以下 ? いいえ 43 以下 ? はい 40 以下 ? いいえ 41 以下 ? いいえ 42 ですか? はい !
面白いことに、範囲が1000までに増えたとしても、この回数は10倍になりません。質問するべき回数は、たった3回増えるだけです。範囲が2倍になるたびに、答えを見つけるための質問の回数は1回ずつ増えるだけなのです。
発展 : メッセージにどれだけの情報があるだろう ?
文字を当てるゲームをしましょう。先攻の人は 17 字までの意味のある文を作り、4 個以内の 伏せ字■を入れます。濁点、半濁点は無視して「はんに■は■■えた」のように「あ」から「ん」 までのひらがなだけを使います。後攻の人は、「初めの伏せ字は『ん』ですか」「2 番目の伏せ字は、『あ行』(あいうえお)ですか」「3 番目の伏せ字は、50 音順で、『た』よりも前ですか」など、「はい」か「いいえ」で答えられるような質問をしていきます。先攻の人は、どの伏せ字にどんな質問 があって何と答えたかを記録します。伏せ字を全部推測し終えたら先攻後攻が変わります。さて、 どこの質問の方法がいちばんわかりやすかったでしょう。
(例題の答えは、「犯人はお前だ」)