知能を持つ紙

知能を持つ紙

概要

人工知能「高度な知能を持つ紙」と人間との対戦を行なう。人類と紙族の代表対決はすでに何度も行なわれているが、紙が圧倒的な強さを誇っている。紙はこの○×ゲームに負けたことは無い。
この学習は、コンピュータプログラムとは何か、および、コンピュータが行なうことはすべて、人が創意工夫により書いた命令に従っていることを紹介することを狙っている。また、知能とは何か、および、単に機械的に規則に従っているものを知能と呼べるか、という議論のきっかけになることも狙っている。

技能

  • 一般的な質問に答えられること。
  • 3 × 3 のマス目を使った○×ゲームを知っていること。

年齢

  • 8 歳以上

教材

  • ホワイトボード、または壁に貼るための大きな紙を数枚
  • ホワイトボードまたは紙に描くためのペン2本
  • 知能を持つ紙」のコピー
  • 開くと音楽が聞こえるグリーティングカード(無くてもよい)
  • ワークシート
    • 応用と解説 filePDF
  • 授業用補足資料 filePDF

活動

あなたが持っている紙が、ここにいる誰よりも(頭がいい先生と比べても)高い知能を持っていると子供たちに言いましょう。何回も、しだいに強く、どんなにその紙が知能が高いのか強調しましょう。ただし、それがなぜなのかは言わないで。その紙を振り回す時には、字が書いてある面が子供たちから見えないように気をつけましょう。

あなたが言ったことを信じるか、子供たちに聞いてみましょう。最初に、この紙に知能があると言ったのを信じる人に手を挙げてもらいましょう。次に「私が言ったことはでたらめで、紙に知能があるわけがない」と思う人に手を挙げてもらいましょう。
たいてい、ほとんどの子どもは「でたらめ」のほうに手を挙げるでしょう。子どもたちをほめてあげましょ う。正しいあなたを信じる子どもも、信じない子どもはさらにもっとほめてあげましょう。-すぐれた科学者た ちは皆、さまざまな人がどんなにりっぱな意見を言っても、何らかの証拠が無い限りそれを信じることはないものです。

でも、ちょっとだけおつきあいください。その紙は知能があるかもしれないし、ないかもしれない。でも、私 がそんな突飛なことをなぜ言うのか、その根拠について考えられることを、子どもたちに言ってもらいましょう。

子どもたちからはこんな意見が出てくるかもしれません。特別なインクを使っているのではないか、ラミネート加工されているからではないか。前者のような意見に対しては、面白い考えだとほめた上で、それでどうして 紙が知能を持つのかを聞いてみましょう。後者のような意見に対しては、このプラスチックの加工は特別なもの ではなく、この紙は指で触られるのが嫌いなのでそのためにカバーしてあるだけなのだ、と説明しましょう。

また、こんな意見も出てくるかもしれません。この紙の中にコンピュータが埋め込まれているのだ、と。これは、 用意してある、あまり愉快ではない音楽が流れる「音楽グリーティングカード」を持ち出して、こういうカード はチップが埋め込んであって音が鳴るのだ、ということを紹介する機会になります。(これはこれではあなたの 誕生日に何をすべきかを知っているだけの知能はあると言えます。)このようなチップでも、人類で初めて月面 に降り立った宇宙飛行士のニール・アームストロングがその月旅行で使った組み込みコンピュータよりも複雑な のだ、ということを紹介するのもいいかもしれません。そして、あなたの紙ももしかしたら同じようなことがで きるかもしれないが、でもあなたはそうは言っていない、ということを付け加えましょう。

他に、こんな意見も出るかもしれません。その紙に書いてある言葉が重要なのだと。では、紙が知能をもつた めの言葉というのはどんな言葉なの? と聞いてみましょう。偉大な方程式? すばらしい詩? わくわくするよ うな内容? いくつか例を挙げて、これは知能を持つと思う? と子供たちに聞いてみましょう。それらが違う なら、賢いものをまた探さなければなりません。知識と知能は違う、ということについて話し合ってみましょ う。また、彼らは試験のために物事を覚えるだけではなく理解しようとしているし、その二つは違うことだ、と いう問題について話し合ってみましょう。だから、そのような言葉をただ書くだけで紙が知能を持つわけでは ない、ということを分かってもらいましょう。

その紙が知能を持つことを納得させるためには、その知能があることを示すことを何かできなければだめ、と いうことを指摘しましょう。紙は何ができるでしょうか? 実はこの紙は、○×ゲームに一度も負けたことが ないのです。(この紙の対戦相手はいつも人間です。)このゲームでは、二人のプレーヤーがどちらも完璧な手を 指すと、結果は必ず引き分けになる、ということを子供たちに気づかせましょう。でもこの紙は、子供たちのよ うな人間といままで対戦した中で、だいたい 2 回に 1 回は勝ち、それ以外は引き分けでした。これは完璧な知能 で、人間にはそんな知能はありません。
子供たちに、これを信じるか、それとも証拠を見せて欲しいかを聞いてみましょう。証拠を見せるなら、子どものうちだれか二人に前に出て協力してもらいましょう。

ゲーム
○×ゲームの枠を、黒板かまたは壁に貼った大きな紙に描きます。子ども二人にそれぞれペンを渡 します。「この紙がどんな高い知能を持っているかは、○×ゲームをやればわかります」と子どもたちに言いま しょう。これは人間同士の対戦ではなく、「紙族」と「人間族」の対戦です。紙にはコンピュータと違ってロボッ トアームやカメラを付けられないので、人間が勝負を手伝う必要があります。知能の勝負ですから、それ以外を 手伝ってもらうことは勝負に影響しません。

ですから、二人の子どものうち一人は、ゲームで紙の役をします。この子どもの役目は、紙の指示どおりに ゲームを進めることです。この子は自分の高度な知能のスイッチを切り、指示されたとおりのことをします-こ の子がうまくゲームをするかどうかは関心外です。この子は紙の指示を大きな声で読み上げて(それによって他 の子どもは、この子自身がゲームをしているのではなく紙がしているのだとわかります)、その指示通りにやることです。
もう一人の子どもは、「人類最高の知性」を代表してゲームをします。ゲームが引き分けになりにくくするためには、本当にこのゲームがうまくて負けないような子どもはむしろ選ばないほうがいいでしょう。(でもそん な子どもでも勝てないことがよくあります。)この子どもの役目は、自分の知能のすべてを使ってゲームをする ことです。高度な知能を持つ紙と対戦するのですから、公平を保つためにこの子どもは、必要なら他の子どもたちから手助けを得てよい、と言っておきましょう。他の子どもたちには、この子が間違ったと思ったら、あるい は次はどういう手がいいかが分かったら、かまわないから大声で叫びなさい、と言っておきましょう。

では紙の役の子に指示を読んでもらいましょう。(これは先手で行なう手の指示です。紙は先手が得意なのだ と言いましょう。)もしだれかがそれを不公平だと言ったら、このゲームは引き分けでも良いということを言い ましょう。後手は負ける理由にはなりません。(訳注:この段落はだいぶ苦しい弁明の感があるが、訳としては こう書かざるを得ない。)
「紙の従者」は最初の一手についての指示を読み、そのとおりにします-ここでは角のマスをとる指示です。 その次人間側が一手打ちます。いろいろ異なる大声の助言が来るでしょう。確信がある人は、人間側をやっている子どもに、最も良いと思う一手を勧めてあげるのが良いでしょう。このように進めていきますが、その際、紙 側の子どもが正しく指示を読みそのとおりにしているか確認し、また、必要な場合は紙がどう指示しているのか その子が理解できるように助けます。例えば「反対側の角」は対角線上の反対の角という意味です。このことは とりあげて、あとで、なぜプログラミング言語が必要なのか-何が必要なのか正確に述べられるように、なので すが-といった話に導くこともできるでしょう。

第 2 手か第 3 手を打ったところで、見ている子どもたちから、このゲームは人間側の負けだという声が出てく る場合があります。人間だとよくここであきらめてしまいますが、相手はただの紙だということを子どもたちに 思い出させましょう。ただ紙側がそれまで運が良かっただけかもしれない、まだこの先で失敗をするかもしれないし、人間がわかっていることが分からないかもしれないのです。
紙側が「両取り」-例えば縦にも横にも×が 2 個並んで勝ちがもう決まった-の状態になったら、人間はふざ けてインチキをするかもしれません。例えば×を○に書き換えるとか、です。人間はしばしばここでインチキに たよる、と指摘し、これはただの紙でまだこのあと間違えるかもしれないと言って、子どもたちに正しくゲーム を進めさせましょう。
ゲームは紙側が勝つか、または引き分け(人間側が、角でなく辺に打ばよい、ということに気づいた場合)の どちらかで終わります。引き分けの場合、これは予想の範囲内であり、その場合でも人間側を勝たせなかっただ けでも紙側は賢かったのだ、と考えてください。「紙はその不敗記録をまた伸ばした、紙が人間よりも知能が高 いわけではないかもしれないが、でも同等ではあることは示された。」と子どもたちに言ってください。紙側が 勝った場合は「またもや紙は人間より知能が高いことを示した、要求されたその証拠はこれで示した。」と子ど もたちに言ってください。これで二人の子どもは席に返して、紙が勝った場合も引き分けの場合も、「出てきて くれた二人の子どもとすばらしい演技をしてくれた紙に、みんな拍手を。」と言ってください。

説明
あなたたちが求めた「紙に知能がある証拠」はこれで見せた、と子どもたちに言いましょう。ここでも う一度、子ども手を挙げさせて、紙に知能があることを信じるか、「私が言ったことはでたらめで、紙に知能が あるわけがない」と思うかを聞いてみましょう。たぶんこのとき、証拠を見せたにもかかわらず、子どもはみん な紙に知能はないと思っているでしょう。
次のように言いましょう:いまゲームで見たようすは知能的なものでした。ですから、どこかに知能があるはずです。どこでしょう? その命令を書いた人に知能がある、と答える子どもがおそらくいるでしょう。子ど もたちに、全員そのように思うか聞いて、手を挙げさせてみましょう。

ここで、この紙に書いてあるこういうものがコンピュータのプログラム、つまり、かならずその通りに実行される命令、なのだということを説明しましょう。いままで子どもたちはコンピュータがすぐれた動作をするのを見たことがあるはずですが、それはこのゲームと同じように、ただ書かれてある通りの命令に従っていただけな

のです。こどもたちが、このゲームでただ指示どおりにゲームをすすめただけのこの紙が「知能がない」と言うなら、同じようにどんなコンピュータもやはり知能はないのです。

人が読んでその指示がわかるよう、この紙には普通の言葉で指示が書いてあります。コンピュータ用に書く場合は、指示は、コンピュータがその指示を理解しそれに従って動くことができる言語、つまりプログラミング言 語で書かれます。次のことを子どもたちに言いましょう:子どもたちが「創造的な知能があるのは指示を書いた 人だ」と思うなら、それは「コンピュータのプログラムを書く人は知能があって創造的だ」という意味になりま す。(そしてそれは実際そのとおりです。)どんなコンピュータでも、それに指示を出し動かしている命令は、すべてそのプログラムを作った人が書いたものなのです。

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